夜尿症(おねしょ)・尿失禁

当クリニックでは、小児夜尿症の相談治療も行っております。お気軽にご相談下さい。

当院の夜尿症外来は、お子様1人1人にきめ細かく対応するため原則として予約制になっています(火曜を除く平日の午後) 

初診の方でもお電話で予約・変更を承ります。予約の患者様を優先的に診察いたしますのでご了承ください。

宿泊行事に備えて受診される場合、治療期間の余裕を持って(宿泊行事の3ヶ月前を目安に)ご来院ください。

夜尿症(おねしょ)

1.うちの子だけ治っていない?おねしょの頻度と治療を始める時期について

おねしょ(夜尿症)の治る年齢の中央値は4歳と言われ、5~6歳以上でオネショをする場合は夜尿症と定義されます。日本国内の調査では小学1年生の夜尿症の頻度は8%で、6年生では1%、小学生全体では男児の7.6%、女児の4.2%と報告されています。欧州での大規模調査では7歳児のおねしょの頻度は男児15-22%、女児7-15%と更に高い数値が報告されています。したがって夜尿症は頻度の低いまれな疾患ではありません。受診される親御さんの中には「周りにおねしょの子はいないのに、うちの子だけ治っていない・・」と不安を訴える方を良く見かけますが、決してそのようなことはないのです。

治療開始の目安は小学入学後にも治っていない場合とするのが一般的ですが、日中の尿失禁を伴う場合などは入学前に治療を始めることもあります。逆に入学後でも本人のやる気が無い、生活指導に関してご家族の協力が得られにくい場合などは無理に治療せずに様子を見ることもあります。

2.なぜおねしょが治らないのでしょうか?

おねしょのお子さんの中には、非常にまれに生まれつきの尿路の病気が見つかったり、尿路の感染症が判明したりすることもあります。
それ以外の多くのお子さんの場合、原因は大きく3つあると考えられています(図1)。

(1)膀胱容量の低下
膀胱機能が未熟なため十分に尿がためられない

(2)夜間多尿
夜間に抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が増加しないため夜間尿量が減少しない

(3)覚醒障害
睡眠時に尿が充満していても目が覚めない

実際にはこれら3つの要因が複雑にからみ合っているため、お子さん一人一人にきめ細かに対応する必要があります。
治療にあたっては、(3)は治療の方法がなく、その必要性もないと考えられているため、(1)と(2)を対象に治療方法が組み立てられます。後述しますが、(1)の治療法はアラーム療法と抗コリン薬、(2)の治療法は夜間水分制限指導とデスモプレシン療法となります。

3.親のしつけやストレスが悪いんでしょうか?

おねしょの原因は精神的なストレスや親のしつけなどが原因ではないかとの質問をよく受けます。

過去にはそのような議論もありましたが、現在は重要視されていません。逆に、夜尿が治らないことで周囲から追い詰められて精神的にダメージを受ける(ストレスは原因ではなく結果である)ことはあると言えます。

4.のど・はなの問題とおねしょの関係

過去に鼻アレルギーやアデノイドを指摘されたことがあり、夜間にいびきをかいたり、鼻が詰まって口呼吸をしている場合などは、耳鼻咽喉科を受診して問題が解決するとおねしょも良くなることがあります。これは睡眠リズムの障害や、低酸素血症による血流障害などが関与しているためと予想されます。特に近年は小児の鼻アレルギーの増加が問題となっているため、当院でもこの点には十分な問診を行い、症状が強い場合は耳鼻咽喉科受診を積極的に勧めています。

5.発達障害と夜尿症

夜尿症との関連がクローズアップされている疾患の中に発達障害があります。特にADHD(注意欠陥多動性障害)では約3割で夜尿症の合併があると報告されています。発達障害のお子さんはもともと中枢神経系の発達が未熟である上に、夜間の水分制限や規則正しい排泄習慣が守りにくい、下着が濡れていることに対する感覚が鈍い、親子関係の悪化を招きやすいなどの独特の要因があるため、夜尿症も治りにくいことが指摘されています。またADHDの治療薬であるアトモキセチンが夜尿症に有効であったとの報告があり、夜尿症の治療と発達障害の治療を適切に組み合わせることで効率が上がる可能性があります。

6.おねしょの治療を始める前に・・

(1)まずは寝る前の水分制限が重要!
どのような治療を行うにしても、寝る前2~3時間の水分制限が大原則となります。これが守れない場合はどんな治療を行っても効果は上がりません。
たとえば19時に夕食を終えて21時に寝るのであればこの間2時間は水分を取らないよう指導します。夕食の時はみそ汁などの味の濃い汁物などは避けた方がよいです。牛乳も夜間の尿量を増やすのでなるべく日中に飲むようにします。また、寝る前2時間よりも3時間の水分制限の方が有効であることが確かめられています。特に夏場はかわいそう・・と思うかもしれませんが慣れてしまうと大抵は大丈夫ですので、これを習慣にしてしまうことが大切です。またこれに関連して、規則正しい生活をする、身の周りの生理整頓をするといった生活指導を行います。

(2)排尿日記をつけます
目盛の付いた透明な計量カップを準備してもらい、排尿のたびに尿量を計測します。夜オムツを使っている場合はオムツの重さも測ります。また水分をどのくらい摂ったかも記載していただきます。排尿日記からは、1日の排尿回数、膀胱容量、日中・夜間の尿量の比率、水分摂取の状況など治療方針を決めるうえでの重要な情報が多く得られますので、休日などを利用して2日間分を記載してもらいます。

(3)ついつい怒ってしまいがちですが・・・
本人を叱っても問題の解決になりません。これはいびきをかく人に「いびきをかくな」と言うのと同じことです。
しかし水分制限が守れないお子さんに対しては、おねしょを克服するには水分制限や規則正しい生活などの努力が必要だということを言い聞かせるのは良いでしょう。

7.具体的な夜尿症の治療

夜尿症には昼間の頻尿や尿失禁を伴うタイプと、夜尿以外の症状がないタイプがあり、治療の方法が多少変わります。このため、治療前には排尿日記の記載を行っていただき、日中の水分摂取や排尿の状況を確認します。当クリニックでの大まかな治療指針を図2に示しました。

夜尿アラーム奏功例

(1)日中の症状を伴う場合
昼間の尿失禁や極度の頻尿を伴う場合は、まず日中の症状を治してから夜尿に対する治療に移行します。従って治療が長期化することもありますので、あせらずに根気よく付き合っていく必要があります。

治療は抗コリン剤という膀胱の緊張を和らげる薬などが用いられます。また定時排尿(時間排尿)といって、1日の中でトイレに行く時間を決めて定時で排尿させる治療法も効果があります。尿を我慢する膀胱訓練を行うこともあります。これは1日1回だけ尿をなるべく我慢して排尿し、尿量を計測する方法です。ただし頻回に尿意をがまんさせるのは良くないので、膀胱訓練は原則1日1回で行います。

また日中の失禁症状を伴う場合、便秘の合併がしばしば認められます。毎日排便があるとしても硬い便をいきんで排出している可能性もあります。これが骨盤底全体の緊張を引き起こし、膀胱に悪影響すると考えられています。緩下剤を一定期間処方することで尿失禁も改善することがあります。

(2)日中の症状を伴わない場合
夜尿以外の症状が無い場合の治療は大きく2つあります。
ひとつは抗利尿ホルモン(デスモプレシン)という尿量を少なくする薬を寝る前に投与する方法。もうひとつは夜尿アラームで、下着が濡れ始めた時(もれ始めた直後)にブザー音で起こす方法です。これらは日本夜尿症学会や国際尿禁制学会でも標準治療として推奨されていて、両者ほぼ同等の治療成績であるため、どちらかの方法で治療を開始して効果が不十分ならもう一方の方法を試すか併用するという治療指針が作成されています(図3)。

夜尿症の世界的治療戦略

当クリニックでもこの2つの治療法を提示したうえで本人・家族の希望を重視して方針を決めています。

(3)デスモプレシン療法
抗利尿ホルモンの作用で夜間睡眠中の尿の産生を少なくする治療法です。従来は点鼻薬のみでしたが、2012年6月より内服薬が国内にも導入されました。
手軽に始められ速効性もありますが、治療を中止すると再発が多いのが欠点です。このため効果があってもすぐにやめるのではなく、薬の量を徐々に減量していくことが重要です。
副作用としては寝る前の水分制限を守らずに薬を続けて使った場合には体内に水が溜まりすぎて水中毒(むくみ・頭痛・嘔吐など)を起こすことがあります。用法を守っていれば安心して使用していただけます。

(4)夜尿アラーム療法
夜尿アラームは欧米諸国では第一選択として好んで用いられている方法ですが、本邦ではまだあまり普及していません。
夜尿治療においては夜中にむやみに起こしても効果はありませんが、膀胱が充満している状態で起こすことによって治癒に導ける可能性があります。アラーム療法は水分を感知するセンサーを下着に装着して尿が漏れ始めた時にアラーム音で起こす治療法です。この方法ではお子さんが夜中に自分でトイレに起きるようになるわけではなく、朝まで持ちこたえるようになります(夜間膀胱容量の増加)。

図4,5にアラーム療法が有効であった症例の治療経過チャートを示しました。

夜尿アラーム奏功例

夜尿アラーム奏功例
夜尿アラーム奏功例

治療開始直後は2時頃に鳴っていたアラームが、5時、7時と明け方にずれて行き、2か月後にはほぼ治癒しているのが分かると思います。またこの方法で治癒した場合は再発が少ないことも知られています。
薬を使いませんので副作用はありませんが、夜起こす治療法に対しては本邦では依然として否定的な意見もあります。夜起こすと成長ホルモンの分泌が妨げられるという記述を見かけますが、実は十分な科学的根拠はなく、国際学会においてもアラーム療法は標準治療として推奨されています。「夜起こさないのが原則」という縛りからはそろそろ逃れても良いのではないでしょうか。
この方法の欠点はアラームが鳴ってもほとんどのお子さんは自分で起きられないため第三者が起こさなければいけないことです。よって親子で治療への意欲が保てないと治療継続が難しくなり、ドロップアウト率は10~30%と報告されています。 また治療器は自費で購入していただくことになります。当院ではご希望の方には「ウエットストップ」をお渡ししています(7,700円)。

実際のアラーム療法の治療成績を図6に示しました。

夜尿アラームの治療効果

これは院長・塚本の前任地である筑波学園病院でのデータです(塚本ら 夜尿症研究17巻:29-33, 2012)。有効率は約80%と良好で再発も少ないことがわかると思います。ちなみにデスモプレシン療法も有効率は同等ですが、再発率は56~100%と報告されています。
アラーム療法とデスモプレシン療法の比較を(図7)に示しました。

アラーム vs デスモプレシン(図7)

アラーム デスモプレシン
作用機序 夜間膀胱容量増大 夜間尿量低下
有効率 62~78% 60~80%
中止後の再発 15% 56~100%
副作用 なし 0.7%
ドロップアウト 10~30% 7%以下

8.三環系抗うつ薬(トフラニール・アナフラニール)について

従来より夜尿治療薬として広く用いられてきたトフラニール、アナフラニールといった薬剤(もともとはうつ病の薬)があります。
しかし小児に使用した場合に不整脈、肝障害など致死的な副作用が起こりうるとの見解から、安易に投与すべきではないとの勧告が出されています(2004年・国際尿禁制学会にて)。またヨーロッパ泌尿器科連合(EAU)に至っては明確に「使用すべきでない」との見解を示しています。
他の治療法が無効でやむを得ず投与する場合もありますが、少なくとも第一選択としてはお勧めできません。 また本剤にはてんかんの副作用があるため、てんかんの既往のあるお子様には禁忌となっています。また中枢神経系副作用のリスクを高める可能性があることからデスモプレシンとの併用も推奨されません。

9.それでもおねしょが治らない場合

上記の治療法でも効果がない場合は干渉低周波治療や漢方薬による治療などもあり、お子さんの状態によって使い分けをしています。
小学校高学年以上の男のお子さんで、全ての治療に抵抗性の場合には、まれに先天性尿道狭窄という疾患が見つかることがあります。診断には排尿時膀胱尿道造影が必要です。本人・ご家族とよく相談の上で検査を行うかどうかを決めています。


尿失禁

1、腹圧性尿失禁:咳やくしゃみをしたとき、笑ったとき、スポーツで急にお腹に力を入れたときなどに漏れてしまうもの。  

2、切迫性尿失禁:急に強い尿意を感じ、がまんできずに漏れてしまうもの。

3、溢流性尿失禁:前立腺肥大症などによる尿道の閉塞や、糖尿病、神経疾患などで膀胱の中に尿が充満し、溜まりきらない尿があふれ出てきて漏れてしまうもの。  

いわゆる尿もれ(尿失禁)は以上の3つのタイプに分けられます。 また、上記のタイプが混合した尿失禁も少なくありません。解剖学的に尿道が短く、出産などで、骨盤を支える筋肉に負担のかかる女性では、軽度のものも含めると大半の方が尿失禁を自覚しているものと思います。しかし、日常的にパッドをあてていたり、外出やスポーツに制限があるようであれば、恥ずかしがらず、受診してみて下さい。 診察は尿検査、エコーによる残尿測定、必要に応じて内診などを行うこともありますが、苦痛を伴う検査はありません。同じ尿失禁と言っても、どのタイプであるか、しっかりと診断をつけてから、治療しなければ、かえって症状を悪化させてしまったり、合併症を併発してしまうこともあります。きちんと専門医での診察や検査を受けた上で、治療することをお勧め致します。

腹圧性尿失禁の治療

基本は骨盤底筋の強化です。看護師による骨盤底筋への力の入れ方を指導した後、骨盤底筋体操をご自分で行って頂きます。必要に応じて薬物療法や、干渉低周波治療器による骨盤底筋の強化なども行っています。

切迫性尿失禁の治療

様々な原因で急に尿意を催し、がまんしづらくなる病態を、過活動膀胱(OAB)と呼び、男女を問わず、かなりの患者さんがいると言われています。症状が強く、実際に尿が漏れてしまうのが、切迫性尿失禁です。原因は様々であり、原因に即した治療を行う必要があります。薬物治療、干渉低周波治療、前立腺肥大症の治療など、的確な診断をつけた上で、原因に即した治療を行います。

溢流性尿失禁の治療

膀胱に尿が充満しているのに、自分の意志では排尿することができずに、あふれた尿だけが漏れだしてしまう状態で、お腹が張って苦しく、時に腎不全(尿毒症)も合併する危険な病態です。早急に閉塞を解除する治療が必要になります。急性期では、尿道に管を入れたままにして尿を出す方法(尿道カテーテルの留置)や、自分で尿道に管を入れて排尿する指導(間欠的自己導尿指導)を行ないます。
症状が落ち着いてから、尿が自分の意志で出せない原因を検査し、原因にあった治療を行います。